WordPressの現在地 — 43%のシェアを持つCMSがAI時代に直面している7つの変化
WordPressはまだ世界最大のCMSです。しかしその成長は止まり、開発者の離脱が静かに始まっています。W3Techsのデータによれば、2026年時点でWordPressはCMS市場の61.4%、全ウェブサイトの43.4%を占めています。一方で、2025年だけでドメイン数が19%減少したという事実もあります。「最大シェア」と「静かな退潮」が同時に起きているこの状況を、正確に読み解く必要があります。

目次全 8 章
「43%のシェア」は何を意味しているのか — 数字の内側を見るべき理由は何か
「43%」という数字は圧倒的です。ウェブサイト10サイトのうち4サイト以上がWordPressで動いている計算になります。しかしこの数字には、重要な文脈が隠れています。
絶対数と相対数の乖離: W3Techsによると、WordPressのCMS市場シェアは2022年1月の65.2%から2025年末に60.7%へと低下しました(Afteractive調べ)。全ウェブサイトに占める割合は維持されているように見えますが、それはウェブサイト全体の総数が増え続けているためです。CMSを使わない静的サイトやヘッドレス構成が増えたことで、「パイ全体が大きくなっているのにWordPressの切り口は小さくなっている」という状態が生じています。
新規採用か、既存継続か: WordPressを「現在もアクティブに選ぶ」サイトと、「10年前に導入して惰性で使い続けている」サイトを区別することが重要です。市場シェアの数字は両者を区別しません。しかし開発者コミュニティの肌感覚では、新規プロジェクトでWordPressをファーストチョイスにする割合が明らかに下がっています。
Enterprise離脱の始まり: Forrester Q1 2025 CMS Waveのレポートでは、エンタープライズ企業のCMS選択がヘッドレス型とテンプレート型でほぼ半々になっています。WordPressはこのカテゴリのどちらにも明確に位置づけられていないという課題を抱えています。
WordPressドメイン数が19%減少した事実をどう読むべきか
Kinstaの調査によれば、2025年2月に580万あったWordPressドメインが同年7月には467万に減少しました。わずか5カ月で19%もの減少です。この数字が示すことは何でしょうか。
まず考えられるのは、小規模・個人サイトの整理です。無料で始められるWordPressは、更新されなくなったブログや放置サイトを大量に抱えていました。そうした「ゾンビサイト」がサービス終了やドメイン失効によって一掃されつつあると解釈できます。
しかし、それだけではありません。SaaS型の競合サービス(Wix、Squarespace、Webflow)が機能を急速に充実させたことで、「WordPressが必要なほど複雑でもなく、かといってWordPressほど手間もかかりたくない」という中間層のニーズを取り込んでいます。また、AIを使った静的サイト生成が容易になったことで、CMSそのものが不要になるユースケースも増えています。
このドメイン減少は単なる「整理」ではなく、CMSの役割が問い直されているサインと捉えるべきです。
開発者はWordPressから離れているのか — コミュニティに何が起きているか
開発者コミュニティの動向は、将来の市場シェアを先行して示す指標です。
GitHubのトレンドを見ると、NextjsやAstro、Remixといったフレームワークへの関心が急上昇しています。一方でWordPressの主要リポジトリへのコントリビューション数は横ばいが続いています。
2024〜2025年にかけて注目を集めた出来事として、WordPressとWP Engineの法的紛争があります。この騒動はコミュニティの信頼を大きく揺るがし、多くのエージェンシーが「WordPressに依存し続けることのリスク」を再評価するきっかけになりました。
さらに2025年、Cloudflareが「EmDash」というWordPress対抗CMSを発表しました。世界最大のCDNプロバイダーがWordPressの代替を自社開発して投入するという事実は、市場がWordPressの将来性に疑問符を持ち始めていることを示しています。
開発者がツールを選ぶとき、彼らは「今日の機能」だけでなく「3〜5年後の主流」を見ています。そのシグナルが、WordPressから離れる方向を指し始めています。
AI時代にWordPressが直面している7つの変化とは何か
変化1:セキュリティリスクの構造的増大
Patchstackの2026年レポートによると、2025年のWordPress新規脆弱性は11,334件に達し、前年比42%増という衝撃的な数字になりました。1日平均31件の新しい脆弱性が発見され続けています。そのうちの36%(4,124件)が実際の攻撃リスクを持つ脅威であり、17%(1,966件)が高深刻度に分類されています。プラグインを1つ追加するたびに攻撃面が広がる構造は、根本的には解決されていません。詳細については、本シリーズの次の記事(記事#2:WordPressのセキュリティ危機)で詳しく解説します。
変化2:「無料CMS」の維持コスト増大
Codeable(2026年)の調査では、WordPressサイトの月次維持費は$300〜$3,500に及ぶと報告されています。3年間のTCO(総保有コスト)は多くの中小企業で$15,000〜$25,000を超えます。「WordPressは無料」という認識は、現実のコスト構造と大きくかけ離れています。コストの内訳については、記事#3(WordPressの本当のコスト)で詳しく分析します。
変化3:Core Web VitalsでのパフォーマンスAI時代の劣位
Search Engine Journalの2025年レポートによると、モバイルのCore Web VitalsにおいてWordPressはShopify、Wix、Squarespaceに劣後しています。ページ速度はSEOランキングに直結するだけでなく、AI検索エンジンがコンテンツを評価する際にも重要な指標になっています。プラグインを積み重ねてきたサイトは、この競争で構造的に不利な立場に置かれます。
変化4:AIO(AI最適化)対応の難しさ
GoogleのAI Overview(旧SGE)やPerplexity、ChatGPT SearchなどのAI検索エンジンは、コンテンツの「意味の構造」を重視します。しかしWordPressの基本設計は、コンテンツを「意味」ではなく「テキスト」として扱うことを前提にしています。Meaning Objectsによって意味を構造化するアーキテクチャが必要なAIO対応は、WordPressの延長線上では実現が難しい課題です。
変化5:Developer Experienceの相対的低下
Next.js、Astro、Remixなどのモダンフレームワークが台頭し、開発者体験(DX)は急速に進化しています。TypeScriptサポート、コンポーネント設計、ホットリロード、型安全性といった現代の開発標準において、WordPressのPHP+テーマ体制は相対的な劣位に置かれています。優秀な開発者がWordPressを「選びたくないもの」と感じ始めていることは、長期的な技術的負債の拡大を意味します。
変化6:Enterprise離脱の加速
Forrester Q1 2025のレポートが示すように、エンタープライズ企業はヘッドレスCMSへのシフトを進めています。Contentful、Sanity、Strapiといったプラットフォームは、APIファーストの設計でWordPressにはない柔軟性を提供しています。中規模企業がエンタープライズ向け機能を必要とするタイミング(多言語対応、複数サイト管理、厳密なアクセス制御)でWordPressの限界が顕在化します。
変化7:構造的限界 — CMSの役割の変化
AIが文章を生成し、AIがコードを書き、AIが画像を生成する時代に、CMSに求められる役割が変化しています。かつて「コンテンツを管理するツール」で十分だったものが、今や「意味を管理し、AIが参照できる知識構造を維持するシステム」が求められています。WordPressはコンテンツ管理という初期設計から根本的に変わっていないため、この新しい役割への対応が構造的に困難です。
今がWordPressを評価し直すべきタイミングである理由とは何か
現在WordPressサイトを運用しているほとんどの企業は、「今すぐ移行しなければならない」わけではありません。しかし今が「評価し直す最善のタイミング」である理由があります。
移行コストは年々上昇する: サイトにコンテンツが蓄積され、プラグインへの依存が深まるほど、移行の複雑さとコストは増大します。今評価しておくことで、最適なタイミングを自分でコントロールできます。
AI時代の設計差が拡大する: 2025〜2026年は、AIを前提としたウェブサイト設計と従来の設計の差が急速に拡大している時期です。この差は、対応が遅れるほど取り戻すのが難しくなります。
セキュリティコストが増大している: 1日31件という脆弱性の発見ペースは、今後も加速する可能性が高いです。セキュリティ対策に費やすコストと時間を、ビジネス成長に投資できているでしょうか。
OS iXanagiのWordPress Migration Pipeline(8ステップの構造化移行プロセス)は、既存のコンテンツ資産を失うことなく、意味構造を持った次世代プラットフォームへの移行を支援します。「移行するかどうか」の判断は企業ごとに異なります。しかし「評価する」ことは、すべての企業が今すぐ始めるべき活動です。
よくある質問(FAQ)
Q1. WordPressのシェアが下がっているというのは誰が言っているのですか?
Afteractiveの長期調査によると、WordPressのCMS市場シェアは2022年1月の65.2%から2025年末に60.7%へと低下しています。W3TechsはWordPressのシェアを引き続き61.4%前後と計測していますが、これはCMSを使用するサイトのみを対象にした数値です。CMSを使用しない静的サイトやヘッドレス構成が増加する中で、母集団自体が変化していることを考慮する必要があります。
Q2. WordPress.comとWordPress.orgは違うのですか?
はい、異なります。WordPress.com(Automatticが運営)はホスティング込みのSaaSサービスで、プランに応じて機能が制限されます。WordPress.org(コミュニティが管理するオープンソース)はダウンロードして自前サーバーで運用するソフトウェアです。一般的にビジネスサイトで使われているのはWordPress.orgベースのセルフホスト環境です。本記事で扱っているセキュリティリスクやコスト問題は、主にこのセルフホスト環境に関するものです。
Q3. ドメイン数19%減少は一時的な現象ではないのですか?
Kinstaのデータが示す2025年2〜7月のドメイン減少(580万→467万)は、放置サイトの整理という側面もあります。しかし単なる整理であれば、新規サイトの追加によって相殺されるはずです。減少が継続しているという事実は、「新規採用の減少」と「既存サイトの離脱」が同時に進行していることを示唆しています。
Q4. WordPressに代わるCMSとして何が選ばれているのですか?
用途によって異なります。小規模サイト・ランディングページにはWebflow、Squarespace。エンタープライズのコンテンツ管理にはContentful、Sanity、Strapi。ECに特化したShopify。そしてビジネス全体の業務と意味構造を統合管理するプラットフォームとしてはOS iXanagiが挙げられます。それぞれが異なる問題を解決しており、「どれが最適か」はビジネスの規模と目的によって変わります。
Q5. 今すぐWordPressから移行する必要があるのですか?
必ずしもそうではありません。ただし「評価する」ことは今すぐ始めるべきです。WordPressの維持に年間いくらかかっているか、セキュリティ対応にどれだけの時間を使っているか、AI時代に必要な機能が揃っているか — これらを数値で把握した上で、移行の是非を判断することを推奨します。
OS iXanagiへのCTA
御社のWordPressサイトは今、ビジネスにとって資産ですか、それとも負担ですか?
プラグインの更新に追われ、セキュリティパッチを当て続け、AI時代の要件に対応するために追加コストを積み重ねているとすれば、それは「資産の維持」ではなく「負担の管理」です。
OS iXanagiは、WordPressで構築されたコンテンツ資産を意味構造を持った次世代プラットフォームへと移行する8ステップのMigration Pipelineを提供しています。移行後は、Meaning Objectsによる意味の管理、Boundary Modelによるセキュリティの構造化、Knowledge OntologyによるAI活用基盤が、ビジネスの成長を直接支えます。
「御社のAIには、憲法はありますか?」— まずは現状診断から始めましょう。
Sources
- W3Techs. "Usage Statistics and Market Share of Content Management Systems." 2026年4月時点データ. https://w3techs.com/technologies/overview/content_management
- Kinsta. "WordPress Statistics 2025." Kinsta Blog. 2025.
- Afteractive. "WordPress Market Share Decline: A Long-Term Analysis." 2025.
- Forrester Research. "The Forrester Wave: Content Management Systems, Q1 2025." Forrester.
- Search Engine Journal. "Core Web Vitals CMS Comparison Report 2025." 2025.
- Patchstack. "WordPress Vulnerability Report 2026." Patchstack Security.
- Codeable. "The Real Cost of WordPress in 2026." Codeable Blog. 2026.
- The Verge. "Cloudflare Announces EmDash CMS to Compete with WordPress." 2025.






